BARATEE

映画『メットガラ ドレスをまとった美術館』という名の豪華な情熱大陸

『メットガラ ドレスをまとった美術館』
静岡シネ・ギャラリーで見てきましたが、これは色んな意味で素晴らしかった!!!!

ーファッションは、アートか否かー

NYメトロポリタン美術館(メット)で毎年5月に開かれる「メットガラ」。
主催者は理事を務めるアメリカン「VOGUE」の名物編集長、アナ・ウィンター。
ハリウッドのセレブが招待される伝説のファッションイベントの裏側を追ったドキュメンタリー映画である。

と聞くと「なんだ、派手な世界の話か」と思われるでしょうが、ちょおおっとお待ちください!
表向きは随分と華やかな世界…もちろんそれは事実ではあるけれど、実際描かれているのはその世界的一夜のイベントをどうやって成功させたのか。
裏方に徹し東奔西走するキュレーターのアンドリュー。と、勿論かのアナ・ウィンターもその一人。その仕事ぶりは彼らの肩書きからは想像もできない地道な努力の積み重ねでしかなかった。

メットガラはファッション界のスーパーボールとも言われるそうで、スーパーボールと言えば遠く離れた日本のわたしたちにもその加熱ぶりが聴こえてくるほど。
セレブリティが集まり世界中から注目が集まるメットにおいて、決してコケられない世界的大挑戦なのである。

今回の展示はテーマが「中国」だったため、本国中国メディアからも極めて鋭いツッコミ多々。
アメリカと中国、過去を繙けば穏やかでない歴史があったりするわけで、状況によっては外交問題にも発展しかねないという非常にセンシティブな問題を秘めている。
そして、身内である美術館内にも抵抗勢力はいる。どう折り合いをつけるか、どう説得するか。
さらに追い討ちをかけるように次々に起こるアクシデントの数々。
「これ…自分だったらどう乗り越えられただろうか…」
規模は違えど、思わず自分の仕事に置き換えて考えずに居られない。
特にイベントやディスプレイを生業とする方にはリアルすぎて胃が痛くなるかも…。
それを、アンドリューとアナが鮮やかに切り開いて行く様は、働く全ての人の心のどこかを掴むに違いない。(画面からは計り知れないものっっっっすごい、苦労が垣間見えてきます。。)

さて、アナ・ウィンターと言えば『プラダを着た悪魔』のモデルとされる冷徹女編集長。
これについても作中で本人がコメントしていて面白い。
今回はかれこれ悪魔と揶揄されてきた彼女の、本当はそうではないのではないか?という側面も見える。
なぜなら、彼女はこの一大プロジェクトを商業目的でやっているわけではなく、美術館の服飾部門の活動資金のために行っているから。
買ってしまった、パンフレット。そりゃ買うわ。

メトロポリタン美術館内ですら未だアートとは認められにくい空気がある服飾部門にいて、ファッションを、クリエイションを後世に残して行こうと情熱を燃やすキュレーターのアンドリュー、そして自分の人脈と情熱をフル稼働して全力でサポートするアナ・ウィンター。
まさに海外版『情熱大陸』。いや、『プロフェッショナル』でもいい。
主役の2人以外にも、蒼々たるメンツが顔を揃えている。
中でもわたし的ヒットだったのは、アンドリューが着ている服がトム・ブラウンぽいなーと思ったらパートナー(恋人)がトム・ブラウンだったこと!
2人の馴れ初めも気になるところ…。というマニアック目線でも満足のいく91分。


いつでもどこでも〝スタバのグランデ〟を離さず、サングラスしたまま色の濃淡にダメ出しをするさまなど「それ、ネタだろ!」と突っ込みどころ満載のアナ・ウィンターにはコメディ女優のセンスすら感じる。
そしてリアーナのギャラ高すぎだろ、のくだりも面白くて笑えるポイントも多分に潜まされています。

メットガラのイベント演出を手がけているのが「恋する惑星」のウォン・カーウァイだというのも、
映画を普段見ないわたしでも、世代的にグッとくる。
そんなわけで「細かいことはいい、ただ美しいものを見たい」という方にも十分満足していただける逸品でございます。
エンドロールでもストーリーは続きますから、明るくなるまで席を立ってはダメですよ。

静岡シネ・ギャラリーでは6/9(金)までですが、浜松・シネマイーラでは7/22(土)~上映予定。ファッション好きには情報量が忙しくて、ストップして巻き戻したくなるくらいの濃度(服飾史が学べる)。また、世界の頂点とも言えるプロフェッショナルの仕事を目にすることは、特にクリエイティブ職の方にはきっと気づきが多いかと!

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